【2022.9.22】「アフターコロナのインバウンド2.0宣言」—間もなく始まる観光再開に寄せて
インバウンドのコロナ明けについては、これまで台湾の動きを継続的に最新ニュースで伝えてきました。台湾では最近、いよいよかという予感が高まっています。日本の各地域では、インバウンド再開の準備はされていますか?今がちょうどよいタイミングです。今はちょうど、来年の事業計画を検討されている時期かと存じます。今こそこれからのインバウンド戦略について考えてみましょう。
■ 台湾人旅行者の3/4は旅行会社を利用していない!?
アフターコロナのインバウンドは、色々な面でコロナ前とは変わります。しかしコロナ前から続いている台湾旅行業界の最大の問題があります。それは、大手旅行会社を中心とした旅行産業の団体旅行の理論と、旅行者の日本の日常を個人旅行で楽しみたいというニーズの乖離が、どんどん拡大していることにあります。
コロナ前の2019年、すでに全体の3/4の訪日台湾人が旅行会社を経由していないのです。個人市場は、団体よりも販促のアプローチが複雑です。従来の旅行産業とインバウンド業界は、そこから目を背けてきたかもしれません。気づいていても、何から着手すべきかわからないといった状況だったといえましょう。しかし慣れない個人旅行市場であっても、もはや真正面から向き合うことが避けられなくなっていきます。
大手旅行社と航空会社へのアプローチ自体が、インバウンド事業であった時代は、過去のものなるかもしれません。個人市場に対するプロモーションの手法は、まだ体系的に確立されていません。日本中の自治体が台湾人ブロガーを使ってみたものの、リーチやエンゲージという数字以外に、その効果すら把握できていないのが実態ではないでしょうか。
■ 台湾人旅行者の真のニーズ
台湾人旅行者は、特別に用意された場所や体験を望んでいるのではありません。訪日リピート率は9割を超え、もはや旅の目的は“日本の日常に触れたい”というレベルまで成熟しています。逆に受入れ側の課題は、日常をどのように見せるか?ということになりました。
今の台湾人のニーズは、知らない人と大型バスに乗り、10分刻みのスケジュールに追われ、混雑している有名な場所に行くよりも、知人同士で専用車に乗り、味のある古民家カフェでくつろいだり、地元でにぎわう魚市場で新鮮で安い海の幸に感動したいのです。大抵の「日本の日常」は、従来の旅行産業のしくみでは到達できないところに存在しています。
■ IBCのインバウンドは「樋」作り
当社IBCは、旅行産業やインバウンド業界との交流ではなく、旅の主役である台湾人旅行者の発想を起点として、理想的な個人旅行の実現を考えてきました。そこには今や数百万人の台湾人旅行者が利用する、Wi-Fiルーターを初めて台湾で普及させることに成功した体験がベースとなっています。10年にわたり海外旅行をする多くの訪日台湾人を直接のお客さんとして鍛えられてきた歴史があります。
当社から日本のインバウンドを見ていて感じたことは、着地の部分ばかりが議論されているということです。「体験型、アドベンチャー、コンテンツの磨き上げ」こういった業界専門用語が生み出されていますが、すべてが川下側での議論です。その情報の訴求には、「海に撒き餌をする」「砂漠に水を撒く」という手法が繰り返されています。
真の誘客を実現するには、川上の集客⇒川中の地上手配⇒川下の受入まで旅行者がたどるすべての行程に沿って流れる仕組みが必要です。ただ川下で待っていて、川上から流れてくるドジョウを考えてあれこれ知恵を練るよりも、いっそ川上に上ってそこから川下まで丁寧に「樋」を作る作業が有効なのです。「樋」は地域専用のもので、地域を好むドジョウが選んで流れてきます。このようなイメージが、IBC式の個人市場開拓のイメージです。
IBCはこのような「川上理論」「樋の理論」など、従来のインバウンド業界の発想とは異なった考え方と設計思想により、旅行者を主役とし、地域が潤う、「本来のインバウンド」を創ろうとしてきました。こうした取り組みは、具体的な旅行形態であるミニツアーの造成と運営を研究する少グループでコロナの前から行ってきました。
IBCの活動の目的は、PRに終わらず、地元の活性化のための実誘客を願う、日本の各地域のインバウンド関連団体の皆様をクライアントとし、共に持続的な個人誘客システム、いわば「インバウンド2.0」を創っていくことです。関連性のない施策を毎年繰り返すのではなく、あるべき姿としての「持続的な個人誘客の仕組みの構築」をまず明確にし、その実現に向けて試行錯誤をしながらも複数年で積み上げていくスタイルなのです。
■ 日本全国の自治体にインバウンド巻き返しのチャンスが到来
多くの自治体の方から聞く話では、これからの日本の自治体のインバウンド事業の環境は、議会からのインバウンド事業の結果へのチェックが、以前より厳しくなっているようです。「PRだから効果は測定できない」という言い訳は、今後は益々通じなくなるでしょう。そして事業の目的において「実誘客」というパンドラの箱が開きつつあります。
厳しいことを申してきましたが、インバウンド2.0は、これまでインバウンドの恩恵にあまり浴しなかった地域にとって未曽有のチャンスです。IBCは現在、県は2県、市町では全国25以上のクライアント様と事業を進めております。いずれもこの環境変化をチャンスと捉えていらっしゃいます。今年、IBCのインバウンドセミナーを受講された自治体や関連組織は230団体を超えました。業界では普通ではなかった独自の考え方が、日本各地に広まりつつあります。
インバウンドには多くの誤解があります。コロナ前の年にミニツアーで1,000名の誘客をされたある東北の市がありますが、市の魅力を伝えたから誘客出来たのではありません。さらにいうと、日本中どの地域にも個人誘客のための魅力は既に存在しているのです。川を下るドジョウを捕まえるには(重ねて例えが悪くてすみません)、餌ではなく仕組みづくりに課題があるのです。
■ 旅行再開への最後の関門はすぐそこに
さて最近の台湾コロナ事情ですが、感染者は8月の2万人を底に再燃して現在5万人を超えています。しかし台湾人の意識には不安がありません。もうすぐ日本に行ける期待が高まるばかり。コロナより訪日熱の方が高いようです。
日本の観光再開の最後の関門は、①日本のビザなし渡航、②台湾の帰国後の隔離ゼロ、この二つです。台湾では現在、日本のビザは申請に二か月半待ち。オンライン申請が始まっても業務はパンク寸前です。①はすでに10月から開始の方針が発表されました。②最後の隔離ゼロ=観光解放Xデーは、10月の国慶日か11月末の統一選挙以降といわれきました。10月になんらかの動きがありそうです。
長文をお読みいただきありがとうございました。この変化をチャンスとし、真の地域活性化のインバウンドにご興味をいただいたら、ぜひご連絡ください。共に新時代のインバウンド2.0に取り組みましょう。まずはご連絡をお待ちしています。
<まとめ>
● コロナはきっかけに過ぎず、波はすでに来ていました。
● 団体から個人、観光から日常と、台湾人旅行者のニーズが変化しています。
● 旅行社ではなく旅行者に、川下ではなく川上に、正面から向き合うことが必要です。
● これまでインバウンドが少ない地方こそチャンスです。
● 正しい仮説と手法で、地域のための「樋」を作りましょう。
【9月23日追記】
まさにこのブログをアップロードしたその日に、同時に最後の関門が2つとも解消されました。
台湾、水際対策をさらに緩和へ 9月29日以降の措置まとめ – フォーカス台湾
岸田総理、来月11日から水際緩和、全国旅行割とイベント割開始を表明 – Yahoo!ニュース
ついにその日が来ました。これでスタートです。皆様、明るい未来に向けて、新しいインバウンドを開始しましょう。
IBC董事長 大塚 順彦
この記事へのコメントはありません。