なぜ台湾人インバウンドか
日本へのインバウンド旅客は3,000万人を超え(2019年)、世界中の国、地域から日本へ観光やビジネスでいらっしゃるようになりました。世界には多くの対象があるのに、なぜ台湾市場へのマーケティングをお勧めするのでしょうか。
I.台湾からのインバウンド
の経済的価値
どの業界でもマーケティング企画の際には、既存客や潜在顧客のCLTV(Customer Life Time Value 顧客生涯価値)分析を経て、CLTVの一番高い顧客層を探し出し、探し出した顧客層をターゲティングした製品開発やプロモーション施策を実施するという考え方は一般的かと思います。
インバウンドのCLTVは、おおよそ【訪日市場規模】x【訪日当たりの宿泊日数】x【訪日リピート】で表されます。
実は台湾市場はそれらどれをとってもトップクラス。毎年多くの台湾人が日本を訪れ、無給休暇で会社を休んでも1日でも長い滞在を計画し、子どものときは親と、成長してからは友人と、大人になって恋人と、結婚して配偶者や子供と、お爺さんお婆さんになって孫となど、ライフステージが変わっても何度も何度も日本に訪れる。それが台湾人であり、日本にとって極めて経済的価値の高い顧客層なのです。
インバウンド3大メジャー市場の一つ
中国、韓国、台湾が不動の訪日ベスト3
2019年に、3,100万人と過去最高の訪日人数

2019国別訪日人数の割合

訪日外国人数推移

台湾は常に訪日流入元トップ3に入っている地域で、2019年は実に489万人もの台湾人が日本を訪れました。近年さらに訪日客数が伸びており、中国、韓国などとともに、インバウンド事業で私たちが必ずターゲットとすべき市場の一つです。
延べ滞在日数が長い
国内に宿泊した外国人の、
延宿泊人数8,357万人で過去最高(観光庁調べ)


JNTOの統計によると台湾からの訪日客は日本4日~13日間滞在しているケースが多い(4~6日間、7~13日間合わせて73%)です。その一方で、3日間以内の短期滞在の方は僅か4%しかおらず、地理的に近いのにも関わらず長目の日本滞在を楽しもうという方が多いようです。
これは韓国と比較すると明確です。韓国も、台湾と同じように地理的に日本に近く多くの韓国人が日本を訪れています。しかしながら、3日以内の短期旅行の割合が34%もおり、全般的に見ると滞在期間が短くなる傾向がありそうです。
そのため、その他全ての条件が同じと仮定すると、同じように日本に地理的に近い韓国と台湾を比較した場合、台湾旅客をターゲットにしたほうが大きな経済価値を得られると言えそうです。
2018年主要三国の国内の延宿泊人数

高いリピート率=長期間では高単価
台湾人の訪日リピート率は、中国人の二倍以上


JNTOの調査によると台湾人訪日客の84%が2回目以上のリピート訪日客で、なんと10回以上訪日されているかたも19.5%もいらっしゃるというから驚きです。
これは、中国訪日客と比較すると明瞭です。中国からは62.8%もの訪日客が初めての訪日で、「今回の旅行は最初で最後の日本旅行」となるケースも多いようです。これには中間層にとっては未だに海外旅行は高額で何度も行けないという経済的な要因や、そもそも中国人にとって日本が特別に人気のある地域ではなく、人気訪問先が分散していることにも原因があります。
台湾に住むとよくわかるのですが、台湾人同士の会話では「今年の海外旅行はどこの国に行く?」ではなく、「今年の日本旅行はどの地方で何をやる?」という会話が自然に行われています。日本が大好きでリピーターがほとんどの台湾人をインバウンドのメイン・ターゲット市場にすること、これはごくあたりまえなことなのです。
II.日本との繋がりの深さ
日本をよく知る超親日国
台湾へ訪問されたことがあるかたは誰でも親日の雰囲気を感じたのではないでしょうか。
* 商売とは別に日本語で話しかけてくる人々
* 街なかに溢れる日本語看板
* 日本料理店の数々
* 人気の日本語専門チャネル
* etc.
少し古いですが哈日族と言われる言葉が流行り、日本好きの若者が流行をリードしたこともありました。最近では懷日という言葉も使われ日本統治時代を懐かしむ動きもあります。
それらは50年にも及ぶ日本統治時代とその後の歴史のいたずらによって生まれたもの。時代の流れやブームの浮き沈みを経て、現役世代の台湾人にとって、日本は単なる国ではなく、文化の一部になっています。
日本と市民レベルでの関係が極めて良好なため、政治的要素に殆ど左右されることがなく安定して訪日客が増加しているのが特徴で、日本のとっては一番大切にしたい「優良客」であると言えます。
日本の地方まで訪問する

2019年 都道府県別・国籍別外国人延べ宿泊者数構成比
中国人は関東、近畿の有名な観光地に集中している
台湾人は訪問先が日本全国へ散らばっています。
訪日リピーターが多い台湾人は、一度目の訪日では関東や近畿の有名な観光地に行っても、二回目以降は関東や近畿だけでなく日本の地方へも確実に訪問し、日本全国でお買い物や体験を楽しんでいる。それが台湾インバウンドの特徴です。
地理的に日本から近い:直行便の多さ

台湾と日本の間には実に一週間に1000以上の直行便があり、主要都市だけではなく、地方都市へも多くの定期便があります。日本に近い上に直行便が充実しているため、それが、台湾観光客にとって日本を魅力的で特別な場所にしています。週末に休暇を少し追加するだけで、国内旅行の感覚で家族や友達と日本を楽しむことができるLCCが充実しているのも特徴です。90%以上が訪日リピーターなため、もう日本への旅は慣れっこです。一度行った場所に何度も行く方もいれば、ニッチな場所に行って体験を楽しむ人もいる。台湾人にとって日本の楽しみ方は様々です。
III.台湾市場でのプロモー
ションのしやすさ
川上販促が行いやすい=低コスト

台湾の川上へのリーチ効率の例
海外旅行、訪日観光に関心のある層へのリーチ効率の高さ
* 人口の65%が出国
* 出国の3分の1、全人口の5分の1が訪日
インバウンド責任者にとって嬉しいのは、台湾が川上へアプローチしやすいことです。
これは中国と比較すればわかりやすいかと思います。中国は14億人の人口がおり、訪日しているのは全人口のわずか0.5%です。また、中国人にとって日本が一番の人気スポットというわけでもなく、香港、マカオ、タイ、韓国に次いで5番目の人気に過ぎません。勿論、日本からすると中国人観光客の規模が大きいので、期待値は上がりますが、人口も多く、国土も広く、日本への関心が特別に高いわけでもない中国でプロモーションをするのは莫大な費用がかかってしまいます。インフルエンサーによるプロモーション費用が台湾より10倍高かったというお話も聞いたことがあります。
一方、台湾の人口は2,350万人、面積は九州程度しかございません。でも、ここからすごい力が生み出されるのです。2,350万人の人口の内、延べ65%の1,500万人もの人が海外へ出国しています。さらに驚くことに、出国の約3分の1が日本を行き先にしているのです。日本へ訪れる台湾人の数を人口全体との比率で表すと、人口の約5分の1(22%)もの台湾人が毎年日本を訪れている計算になります。
このような台湾では、国土が狭いだけでなく、多くの国民が海外旅行に出かけ、そのうち日本へ訪れる割合が高いため、川上へのアプローチのしやすさが抜群な市場だとい言えます。
香港人にも訴求できる

まとめ
I.台湾からのインバウンドの経済的価値
- インバウンド3大メジャー市場の一つ
- 延べ滞在日数が長い
- 高いリピート率=長期間では高単価
II.日本との繋がりの深さ
- 日本をよく知る超親日国
- 日本の地方まで訪問する
- 地理的に日本から近い:直行便の多さ
III.台湾市場でのプロモーションのしやすさ
- 川上販促が行いやすい=低コスト
- 香港人にも訴求できる
「台湾から始めるとよい12の理由」
